神経難病とは
神経難病とは、数ある神経の病気の中でも原因がよくわからない疾患、治療法が確立していない病気を総称した呼び名になります。
この神経難病に指定されている病気には、パーキンソン病をはじめ、運動ニューロン病(筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症など)、脊髄小脳変性症(脊髄小脳萎縮症、多系統萎縮症など)、多発性硬化症、重症筋無力症、進行性核上性麻痺などがあります。
主な神経難病
筋萎縮性側索硬化症
筋肉を動かす際に命令を伝える神経の運動神経細胞が障害を起こしている状態が筋萎縮性側索硬化症です。50~60代の男性の患者さまが多く、指定難病のひとつです。
発症の原因は特定されていませんが、これは筋力が低下する疾患で、手足やのど、舌の筋肉が衰えるようになります。そして食物を飲み込む、話すといったことがだんだん困難になっていき、病気がさらに進行するようになると全身の筋肉が衰えていって、歩行困難や寝たきりになることもあります。
治療の仕方は確立されておらず、症状の進行を遅らせるための薬物療法としてリルゾールなどを使用します。食事の際は、飲み込みやすい食物を摂るようにします。このほか、体が硬くならないようにリハビリテーションも行います。また呼吸が弱くなった場合は、人工呼吸器を使用し、食べ物が食べられない場合は胃ろうをつくっていきます。
脊髄小脳変性症
小脳と脳幹が変性、萎縮することで体がうまく動かせなくなる状態が脊髄小脳変性症です。原因は特定されていませんが、遺伝的要因のケースもあります。よくみられる症状は、歩行時や直立時のふらつき、指先が震える、言葉が上手く出なくて呂律が回らないなどですが、筋力には影響がみられません。なお症状については、遺伝性か否かで違いはありますが、遺伝子が関与している場合は、比較的若年層に発症します。
現時点では有効な治療法は確立されていませんが、症状を改善させる対症療法として、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)を使用する薬物療法、運動機能の低下を防ぐためのリハビリテーションなどが行われます。
多発性硬化症
多発性硬化症は、髄鞘と呼ばれる神経線維の軸索を包む鞘状の被膜が破壊される脱髄疾患のひとつで、原因が特定できない症状と言われていますが最近は自己免疫疾患の一種ではないかと言われています。よく見受けられる症状としては、視覚障害、眼球が動かしにくい、全身の動きがぎこちない、筋力が衰えていく、排泄障害、言葉がでにくい、などです。これらの症状は、現れたり消えたりを定期的に繰り返すようになります。
現時点では完治する治療法は確立されていないので対症療法です。症状がある場合、炎症を抑える治療としてステロイドが用いられます。症状がみられなければ、インターフェロンやフィンゴリモド・ナタリツマブなどを使用して、症状が現れにくい状態にします。また、運動機能を改善させるためにリハビリテーションも併せて行っていきます。
重症筋無力症
これは自己免疫疾患の一種です。発症メカニズムとしては、免疫システムが自らの細胞を攻撃してしまうことで、神経から筋肉へ命令が上手く伝わらなくなっていき、様々な部位の筋力が低下していく疾患になります。原因は特定されていませんが、胸腺の異常が原因の大半と言われています。
主な症状ですが、少しの動作でも疲労感が強く、筋肉は動かなくなります。休みを少しでも挟むことで、動作が続けられるようになりますが、またすぐに疲れるようになります。初期症状では、朝は症状が軽く、夕方以降に症状が重くなっていきます。なお筋肉が動かなくなることで起きる症状とは、まぶたが開きにくい、ものが二重に見える、食物が飲み込みにくい、話しづらくなるといったことで、次第に肩が上がりにくい、立ち上がりにくいなど全身の筋力低下がみられるようになります。
治療につきましては、症状を軽減させる薬物療法として、ステロイド薬や免疫抑制薬、抗コリンエステラーゼ薬などが使用されます。また、検査で胸腺の異常がみられた場合は、胸腺と胸腺周囲の脂肪を広範囲に切除する手術を行います。